モスロボットのおはなし @アートスーペースかおる野外展示

2023 4月 moss Robot(モスロボット) (今はもう苔むした機械は夢をみる)
今はもう苔むしたこのロボットの おはなしです
先の戦争では、ずいぶん働いた機械でしたが あちこちガタが来て 打ち捨てられて久しいのです
ロボットが命じられたのは 穴を掘り 地雷爆弾を埋め 土を被せる という作業でした
作業中に地雷爆弾が爆発して 木っ端微塵に飛び散ってしまった 仲間のロボットも数多くいましたが ロボット達は 顔色ひとつ変えずに作業しました
アナホル ジライヲウメル  ツチカブス ドカンッ といった具合です
ところで ロボットは まだ動いていたのです
ショベルの腕は ギーゴギゴ ギーゴギゴ 錆びた音を立てて くうを きります
そこに ウモモが飛んで来ました
ウモモは蜃気楼で生まれた サカナみたいな鳥なのです
何処かで折って咥えてきた小枝を ロボットの頭に コツンと落として行きました
「ふん、デクノボウのやくたたず!」 なんて ウモモがイジワルをいうのですが ロボットは 顔色ひとつ変えずに ショベルの腕は くうをきりながら ギーコギゴ アナホル ジライヲウメル ツチヲカブス ドッカーン の作業をくりかえしていましたが 頭に小枝が落ちてきたものですから ギーコギゴ アナホル コエダヲウメル ツチヲカブス
「おーい デクノボウの役立たず!」ウモモがまた馬鹿にしようと 小枝をコツンと落としていきました
ロボットは顔色ひとつ変えず ギーコギゴ アナホル コエダヲウメル ツチヲカブス
そのうちに 何日も何日も雨風にさらされ ロボットは とうとう動かなくなり 錆び色をした 鉄のかたまりに なってしまいました
つぎには 体の表面に 苔がはりつき コンモリとした 緑色のかたまりに変わると 虫や小鳥のひろばになりました
ちょうど ロボットの腕の下あたり だったところ 埋められた小枝から 小さな小さな 若芽が 顔をだしましたが いまとなっては なんの木なのか なぜこんなところに 芽をだしたのか アヤフヤなのです
ウモモだって 蜃気楼から飛んできた アヤフヤなものですから ひょっとすると 苔むしたロボットの見ている アヤフヤな夢かもしれません
ギーゴギゴ アナホル コエダヲウメル ツチヲカブス
ギーゴギゴ アナホル コエダヲウメテ ツチヲカブス ハナガサク