「中国の兵隊が殺されるのを最初に見た時には、飯も食えんかったのに
1年経ち、2年経ち、3年経つと無神経になって、平気で殺されるのを飯を食いながら見ているような精神状態になっていたのです。
この絵は、皆と一緒に土手に腰かけて飯を食っていたところが、殺される捕虜の手が飛んできた。
それを描いている。
私の場合、その時、自分はこうこうであったという反省、鎮魂ですね。
それで救えるわけです。 自分が。」
(NHK「いっちゃがワイド」インタビューより)
「人間の顔と体が するめいかのようになって 道路にへばりついていました
その上を ほこりをかぶった軍用トラックが通過した
通過するたび ほこりのなかで 動いているのが みえた
わたし共小行李の兵隊は ほこりをかぶりながら車両をつけた馬の たずなを持っていた
出征して一年たった兵隊の神経は 平常ではなかったことは たしかです
戦場で つくられていく精神状態は どんなものか どんなもので あったかを描いてみたかった」
(1977年8月 宮崎県総博物館で開催された「坂本正直展」の図録より)