光を求めて 坂本正直展(2013年5月11日〜16日)ギャラリー島田


坂本正直さん(2011年3月逝去。享年97才)の展覧会を開催させて頂きます。企画は所薫子さん(坂本画伯の長女、アートスペースかおる主宰)によるものですが、氏が生涯を通じて貫き通したヒューマニズムの精神に私も強く共感し、今回の展となりました。自らの体験に根ざした戦争への告発と懺悔を深く重く、そこから反転する人間への信頼と希望を「輸送船の中の空」のごとく鮮やかに描いてみせました。そして「馬」への愛。画伯の一つ歳下で同郷の小説家、庄野英二の「星の牧場」を思い浮かべずにはおられません。復員してきて牧場で働くイシザワ・モミイチと愛する軍馬ツキスミ。記憶を失ったモミイチは天の花畑をツキスミの背に乗って駆ける。坂本画伯が見上げた抜けるように青い空と庄野英二の花畑が重なって見えます。作品「玄奘三蔵法師 求法の旅」 (高鍋町美術館所蔵)と共に、戦火や震災で亡くなられた多くの皆さんへの鎮魂と、今なお困難な場に居られる皆さんへ希望の火を灯すことに繋がることを願います。

島田 誠

人間が、人間の生命を断ち切るのに、何の抵抗も感じない状態になってしまったある時間、が、月光に照らされ、静まりかえっている、あの風景のなかで経過したのであった。静まりかえっていた、あの風景のなかで、かすかに動くのは、月光にきらめくクリークの水面であった。あの風景のなかには、生命を、むごたらしく断ち切られてしまった人たちの死体が、夜露にしっとりとぬれて、月光に照らされていた。(坂本正直『クリークの月』より抜粋)地階には、シリーズから「クリークの月」「負傷兵」他。まるで『輸送船のなか』から空を見上げるように階段を上がっていただくと地上階には、高鍋町美術館様のご好意で貸していただいた『求法の旅』シリーズから数点を選んで展示しました。

所 薫子

【関連企画】
第256回火曜サロン 坂本正直展によせて
PartⅠ 映像が伝える坂本正直
PartⅡ スミレ座パフォーマンス『欠片』
5/14(火)19:00開演 ¥500
スミレ座は2009年に結成された舞踏と演劇とをシームレスに浮遊する舞台表現ユニット。
今回は木村佐和子の朗読、荒木菫の舞踏、遠山貴志のコントラバス演奏とで展開されます。
*詳細は火曜サロンのコーナーを御覧下さい。

>>ギャラリー島田 サイト